イエスカルタによる治療のながれ

イエスカルタによる治療は、イエスカルタの製造、イエスカルタ投与数日前の準備、イエスカルタ投与~経過観察の大きく3つの段階に分けられます。

治療を受けることが決まったら、イエスカルタの製造に必要な患者さん自身の白血球(T細胞を含む)を取り出します(白血球アフェレーシス)。取り出された白血球は、厳重な管理のもと製造施設に運ばれ、白血球に含まれるT細胞を遺伝子導入という方法で強化し、数を増やして、患者さん専用のイエスカルタを製造します。

イエスカルタの製造が完了したら、投与前の準備をはじめます。ここでは、イエスカルタによる治療をより効果的におこなうため、化学療法(抗がん剤による治療)によって、体内のリンパ球(T細胞を含む)を減らします。

そして、イエスカルタを投与します。その後は慎重に経過観察をおこない、副作用がみられた場合にはしっかりと対応していきます。

イエスカルタの製造にあたっての準備

イエスカルタの製造に使用する患者さん自身の白血球(T細胞を含む)を取り出します。そこでおこなわれるのが「白血球アフェレーシス」です。アフェレーシスとは、血液の成分を分離することです。
白血球アフェレーシスでは、血液を体外に移動させ(採血(さいけつ))、血球分離装置というポンプのような機器を用いて、血液から白血球を取り出し、そのほかの血液を体内に戻します(返血(へんけつ))。
この採血と返血をおこなうために、太い血管に針を刺します(首、腕、足の付け根の血管)。白血球アフェレーシスは3~4時間かかります。

白血球アフェレーシス
血球分離装置で血液から白血球(T細胞を含む)を取り出す

アフェレーシスの副作用

  • 倦怠感(けんたいかん)
  • 手足のしびれ
  • めまい
  • 吐き気
  • 嘔吐(おうと)など

重篤(じゅうとく)な場合:意識喪失(いしきそうしつ)、失禁がみられることもあります。これらの副作用がみられた場合は、医師、看護師、薬剤師に伝えてください。

「アフェレーシスの副作用」イメージイラスト

白血球アフェレーシスにて白血球を採取したとしても、イエスカルタの製造に時間がかかったり、製造が成功しないことがあります。製造が成功しない場合は、イエスカルタを投与することはできません。

イエスカルタの投与にあたっての準備

イエスカルタ投与前の化学療法について(前処置)

治療をより効果的にするため、イエスカルタを投与する前に体内のリンパ球(T細胞を含む)を減らす目的で、3日間、化学療法(抗がん剤による治療)をおこないます。

この前処置は、血液中のリンパ球の数を確認したうえで、患者さんの状態に応じておこなわれます。
化学療法によって起こりうる副作用については、使用する薬の種類により異なりますので、投与前に担当する医師から説明があります。

イエスカルタ投与前にリンパ球の数に応じて化学療法をおこないます
イエスカルタ投与前にリンパ球の数に応じて化学療法をおこないます

治療中や治療後に気になる症状がみられたら、すぐに医師、看護師、薬剤師に伝えましょう。

イエスカルタの投与〜経過観察

イエスカルタ投与前

投与前に患者さんの状態を確認します。

  • 化学療法(前処置)によって重篤な副作用(特に肺障害、 心障害、低血圧)が認められた場合、その副作用から回復しているか
  • 感染症にかかっていないか

イエスカルタ投与1時間ほど前に、イエスカルタの副作用(発熱、悪寒(おかん)、吐き気など)を軽くするための薬を投与します。

イエスカルタ投与中

イエスカルタによる治療では、30分ほどの点滴(静脈注射)を1回おこないます。イエスカルタ投与中に、過敏症による全身のむくみや血圧低下などの症状(インフュージョンリアクション)があらわれることがあります。

イエスカルタ投与後

イエスカルタの投与により、「サイトカイン放出症候群」「神経系事象」などの重篤な副作用があらわれることがあります。しばらくの間は入院して経過観察をおこないます。
CAR T細胞は患者さんの体内で増えて、1回の投与で標的細胞を攻撃し続けるという特徴があるため、体内にCAR T細胞があるうちは副作用に注意が必要です。

「イエスカルタ投与後」イメージイラスト

治療中や治療後に気になる症状がみられたら、すぐに医師、看護師、薬剤師に伝えましょう。

監修
北海道大学病院 血液内科 教授 豊嶋崇徳先生