リンパ球のがん
悪性リンパ腫は、白血球の一種であるリンパ球が、がん化することで起こる血液のがんです。がん細胞となったリンパ球は、リンパ管を通じて全身をめぐり、リンパ節の多いところ(首、腋の下、足の付け根など)に腫れやしこりのようなものをつくります。多くの場合、痛みはありません。
しこりは、一般的にはリンパ節にできますが、脳や臓器などにもできることがあります。
種類が多い
悪性リンパ腫は、大きくホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の2つに分けられます。日本人に多いのは非ホジキンリンパ腫です。
非ホジキンリンパ腫はさらに、がん化するリンパ球の種類(B細胞、T細胞、NK細胞)によって分類されており、細かく分けると100種類ほどのタイプに分けられます。
治療開始のタイミング
悪性リンパ腫は、種類によって病気の悪性度が異なります。悪性度とは病気の進む速さのことで、悪性度が高いほど速く進みます。
ゆっくりと年単位でリンパ節の腫れが大きくなる悪性度の低いリンパ腫もあれば、腫れが週単位で急速に大きくなる悪性度の高いリンパ腫もあります。
悪性度の低いリンパ腫では、すぐに治療をおこなわず、経過観察といって定期的に検査をしながら様子をみていく場合もあります。一方、悪性度の高いリンパ腫では、すぐに治療をはじめます。
悪性リンパ腫の治療
悪性リンパ腫の治療は、薬による治療(薬物療法)、放射線療法、造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)移植などがあります。はじめて病気がみつかったときは、薬物療法と放射線療法が中心です。造血幹細胞移植は、最初の治療のあとに、再発(病気がぶり返す)したときにおこなわれることがあります。
最近では、CAR T(カーティー)細胞療法などの新しい治療も、悪性リンパ腫の種類によっては、使えるようになっています。(CAR T細胞療法)
治療法は、悪性リンパ腫の種類、悪性度や広がり、患者さんの症状や状態などにより、患者さん本人と担当の医師(血液内科専門医)で相談しながら決めていきます。
びまん性大細胞型(だいさいぼうがた) B細胞リンパ腫とは
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は非ホジキンリンパ腫のうち3〜4割を占め1)、もっとも多くみられるタイプです。
DLBCLは、リンパ球のうちB細胞が、がん化することで発症します。 “びまん性”とは、組織全体に均一に増殖して広がるという意味で、DLBCLでは、がん化したB細胞が、組織全体にはびこるように広がっています。病気の進行が月単位で進む中悪性度のリンパ腫です。
はじめてDLBCLと診断された場合の標準治療は、R-CHOP(アールチョップ)と呼ばれる複数の抗がん剤を組み合わせた治療です。さらに病状や患者さんに応じて、放射線療法がおこなわれることもあります。
薬による治療の効果がみられなかったり、効果がみられても再発してしまった場合には、 別の抗がん剤治療や造血幹細胞移植が検討されます。最近では免疫療法のひとつであるCAR T細胞療法も使用できるようになっています。
- 監修
- 北海道大学病院 血液内科 教授 豊嶋崇徳先生
- がん診療レジデントマニュアル 第9版:15 造血器腫瘍 悪性リンパ腫, 2022, p320
- 国立がん研究センター がん対策情報センター:がん情報サービス「悪性リンパ腫」 https://ganjoho.jp/public/cancer/ML/index.html (2023年3月8日アクセス)
- 伊豆津宏二(監修):【2019年改訂】もっと知ってほしいリンパ腫のこと, NPO法人キャンサーネットジャパン, 2019, p4, 6-9 https://www.cancernet.jp/wp-content/uploads/2013/04/w_Lymphoma.pdf (2023年3月8日アクセス)
- 国立がん研究センター がん対策情報センター:がん情報サービス「診断と治療 造血幹細胞移植」 https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/HSCT/index.html (2023年3月21日アクセス)
- CHOP療法の手引き(2020年2月):国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科・薬剤部・看護部 https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/pharmacy/010/pamph/DLBCL/010/DLBCL_010.pdf (2023年3月21日アクセス)